「さて、準決勝の第一仕合はイモvsガキでありますが、いかがでしょうか解説のDONさん?」
「……」
「DON?」
「……」
「どーおん!」
「はっ、すいません、寝てやがってました」
「試合中に、眠らないで下さいよ」
「何か二年半ぐらい寝てたよーな気がするぞ」
「あんたはキン肉マンかい」
「まあ、それはさておき、この二人ですが、まあ女王と従者みたいなもんですな。決果は見えたも同然」
 リングでは、レフェリーのカイチョーと試合を行う両者を除いた人間は既に引っこんでいる。
 それを見届けると、DONはやおらマイクを取り出し、叫んだ。
「よっしゃ、もう二人の説明はいらんな。三年越しの『夜叉姫殿の章』はえーかげん終わらしたいから、ちゃっちゃと行くぞ!!」
「準決勝第一仕合開始!」
 ツクツクホーシ
 レフェリーの合図で仕合開始のセミが鳴く。
「イモちゃーん」
「はいーっ!!」
 ガキに声を掛けられた途端、イモは直立不動になった。
「おおーっと、イモはいきなりガキの支配化に置かれてしまいました。
 いかがでしょうか、解説のDONさん?」
「これぞ、ガキの必殺技<呪縛>です。アヤツはこの能力で自分が魅了した男達を支配することができるのです。ああ、恐しや」
「ねえ、イモちゃん。あなたは私のために負けてくれるわよねぇ?」
 ガキが微笑む。知らない者から見ればそれは子供のような無邪気な笑いであるが、イモから見れば、それは魔性の笑みなのである。
 イモの額から油汗が滴り落ちている。ガキの<呪縛>から逃れようと必死に耐えているのだ。
「……い……い……嫌だァーッ!!」
「おおーっと、これはどうしたことでしょうか」とカメー。
「こりはびっくり。まさか、イモがガキの<呪縛>から逃れるとは」
 ふと、カメーはあることに気がついた。
「DONさん!あれを見て下さい」
 カメーはイモの帽子を指さした。
「どれどれ、一見変てつのないコック帽に見えるが」
「色ですよ、色。一回戦では彼は帽子は白かったですよね
 ところが、今や彼のコック帽は金色に輝いている。
「ま、まさか、ひょっとして彼は……」
「どういうことですか、解説のDONさん」
「グランシェフですよ、<グランシェフ>。ついに伝説のスーパーシェフが目覚めたんですよ」
「何か、料理の鉄人みたいですね。TVネタは風化しますよ」
 第一回戦の死闘が彼の内在する資質を目覚めさせたのであろうか、イモはもはや過去のイモではなくなっていた。